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第11回「レモンをお金にかえる法」ルイズ=アームストロング、ビル・バッソ

お金はどうすれば稼げるのか?

 レモネードや犬ごやなど、もののねだんはどんどん上がる。

車あらいや しばかりなど、サービスのねだんも上がりつづける。

でも、ピーウィーがあらう車もダイアンがつくる犬ごやも、

まえより かずがふえたわけではないから、生産性はいままでどおりだ。

 

そうさ、これが あの

インフレーションという

びょうきなんだよ

(「続・レモンをお金にかえる法 ”インフレ」)

 

 大体の日本人にとって、経済の話は中学校の社会科で初めて学ぶものですが、小学校でも中学受験する子は「インフレーション」とかの単語を覚えます。「第一次大戦の後でドイツでひどいインフレーションがおこって〜」みたいなアレですね。

 でも小中学生どっちにとっても、あんまり経済の話って身近じゃないんですよね。

 私は前の仕事で、そのくらいの年齢の子どもたちに経済の説明をする機会が何度かありました。

 本人たちも、「政治より経済の話のほうが自分の人生に直結してる気がするし、しっかり聞いておくかな」と思ってはいるのですが、そもそも自分の家の収支がどうなってるかもよくわからない。身近な金の流れさえよくわかってないのに、企業や国家、世界規模の金の流れを説明しても、どうもピンとこない。

 「お父さんお母さんに家計がどんな感じか聞いてごらん」と言ったら、「子どもがそんな事知ろうとするんじゃない!って怒られました」なんて返ってきたこともあります。

 「ええー、いまどきの親でもそんなんなの?」と思うものの、金の話を子供にしない親は多いみたいですね。収入がいくらで家のローンとか進学費用がどうなってるのかとか、率直に話して理解させておいた方が子供にとっても自分の人生を考える上で良いと思うんですけどね。

 

 さて最近は、日銀のゼロ金利政策プラス量的緩和で2%のインフレを目指そう、というのが日本経済の話題の中心です。

 アベノミクス三本の矢の2本目3本目がことごとくパっとしない中、株価も上昇してなんとな〜く景気回復してそうな雰囲気があるのは、ほぼ日銀の緩和政策のお陰でしょう。

 

 さてここで、社会科を勉強しているちょっと頭良い子どもとかは悩んでしまうわけです。

 いまの日本ではインフレを目指して景気回復してるのに、教科書には「インフレのせいでドイツ経済は最悪だった」みたいに書いてある。インフレは良いものなのか?悪者なのか?インフレが悪者だとしたら、値段が下がるのが良いのか?…

 

 とまあ、ことほど左様に経済の話はややこしいものなのですが、その基礎的な考え方の部分を学ぶのにうってつけなのが、この「レモンをお金にかえる法」2冊なのですね。あー前振り長かった。

 この本は40ページ足らずの絵本ですが、この本を読めばミクロ経済とマクロ経済のキソのキソのそのまたキソが学べます。

 ストーリーはレモネード屋を開いた女の子が、人を雇ったり、ライバル店と競ったり、ときに合併したりしながらお店を繁盛させていく物語です。

 ページ数がページ数ですから、経済学全体を俯瞰するような内容ではありませんが、小中学生が「ああ、なるほどお金を稼いだり使ったりする流れってこんな感じなのね」と理解するとっかかりとしては、最も優れた本のひとつだと思います。

 「続・レモンを〜」のほうはまさにこのインフレ不況対策がメインのお話なのですが、第1巻を読んでいれば「安売り競争の状態も良いとは言えない」というのがわかります。

 

 子どもが読んでもわかる本ということは、大人にとっては最良の入門書でもあります。「なんか経済学について勉強したいんだけど、なにから入れば良いのかな」という方には文句なしでオススメです。

自習室Rassvet

学ぶことは楽しい。探求は人生だ。

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