

第27回「モーパッサン短編集」モーパッサン
たった15分で読める、人生の苦味
読書の秋!には小説がド定番。
ということで今日は自習室の小説をご紹介。
しかし、読書しに自習室に来た方はともかく、勉強や仕事をしにきて、小説にどっぷりハマって何時間…となったら元も子もないですよね。
そこで今回は、短い時間で読める「モーパッサン短編集」をご紹介いたします。
モーパッサンは「女の一生」という作品で有名ですね。理想と現実の違い、女性の生き様…そういうものを描いた名作長編小説です。
この短編集でも、やはり女性が主役の物語が多く描かれます。それぞれ大体10ページから20ページ程度の短編が20章つまっており、人々の夢や理想、野心や野望と、現実の残酷さ、やるせなさや滑稽さが描かれています。
どれも読みやすく面白いのでぜひ読んで頂きたいのですが、今日はその中から一編、「首飾り」についてご紹介いたします。滅茶苦茶ネタバレなので、気になる方はここまで。
面白い本なのでオススメです!
…もういい?
とある小役人には、美しい妻がおりました。美しくとも特別裕福ではない普通の家に生まれた彼女。「自分の美しさにはもっとエリートで金持ちの男が釣り合うのに」と本心でおもいつつ、そんなツテもないので小役人の妻になりました。
しかしそんな見栄っ張りな彼女が、内閣の大臣たちも出席するような豪華なパーティーに招かれます。しかし良い服も宝石も持ってない彼女は、「貧相な身なりではパーティーなんか行けない!」とイライラします。
夫は貯めてた金でドレスを買ってあげますが、宝石までは買えません。そこで、近所に住んでる仲良しのご夫人に宝石を借りるよう妻に言います。
そして妻は、その夫人からダイヤモンドの首飾りを借りて、パーティーに出席しました。
美貌を誉め称えられ、幸福の絶頂にいた妻。しかし、家に帰ると首飾りがなくなっていることに気付きます。あちこち探しまわりますが、結局見つかりません。
結局、似たような代わりの首飾りを買ってお返しすることにしました。
しかしダイヤモンドの首飾りは恐ろしく高価でした。家屋敷は売り払い、役人の夫が親から相続した遺産をなげうって、方々から借金をしてようやく買うことができました。
それから10年、夫妻はその借金の返済の為にひたすら働きに働き詰めます。
10年後、苦労を重ねたおかげで、なんとか借金を返済し終わりました。しかし、10年の艱難辛苦によって、彼女は在りし日の美貌の影も残らぬ、老け込んだ醜い姿になっていました。
そんな中、妻は首飾りを貸してくれた夫人にバッタリと再会します。彼女は今も美しいまま。
話しかけてみても、人違いと思われるくらい、妻の容姿は醜く変わり果てていました。
八つ当たりではあるものの、妻は「あなたのせいよ!」と言って、夫人に今までの一切を打ち明けます。
首飾りを無くしたこと。
その代わりのダイヤモンドを買ったこと。
その借金の返済で10年間、とても苦労したこと。
妻が全てを語りおわった後、話を聞いた夫人は…
まさに衝撃のラストシーン。ホラー映画も真っ青な恐ろしい結末です。いや、たった一文でこんなにドキドキさせられるとは思いませんでした。古典侮りがたし。
ぜひご自身で内容を確認ください。
オススメです!
あの日、首飾りを失くすような事がなかったら、いったいどうなっていただろう。そんなこと誰にわかろうか、いったい誰が。人生はなんと不思議にできていることか!ほんのちょっとしたことで、破滅したり、救われたりするのだから!
(「首飾り モーパッサン短編集」モーパッサン)